【開催レポート】社会起業入門講座「『ほしい未来をつくる』仕事って何?」 7/16開催


nao17月16日、文京シビックセンターにて、NPO法人グリーンズ代表でありgreenz.jp編集長の鈴木菜央さんをゲストにお迎えし、今年度の社会起業入門講座「『ほしい未来をつくる』仕事って何?」を開催し、区内外から40人の参加がありました。

第1部では、社会起業やソーシャルデザイン、NPO法人グリーンズの「人を活かす」仕組みづくりについてお話をいただき、第2部では、お話を踏まえた受講生の質問から鈴木さんとの対話を行いました。

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 ◇第1部 鈴木菜央さんのゲストトーク 「『ほしい未来をつくる仕事』って何?」

「一人ひとりが人生の主役になれる社会」を目指して

講演の冒頭では、鈴木さんが社会起業に興味を持つようになったきっかけと、グリーンズがどのように始まったか、そしてどのように今日に至ったかをお話しいただきました。

鈴木さんは、学生時代に発生した阪神・淡路大震災で、神戸にてボランティアに参加しました。その現場で、高校生だろうが大人だろうが、「良い」というものは受け入れられ、クリエイティブに実現されている様子を見て、「お金が一円も動かないのに、すごいことができるんだ!」と感じたそうです。そこから、「人の可能性が発揮されること」を考え始め、それが現在の、「一人ひとりが人生の主役になれる社会」をビジョンとして掲げ、2006年にグリーンズを立ち上げることにつながっています。2011年3月の東日本大震災を機に、やりたいことをやろうという思いから、NPO法人を立ち上げました。

greenz.jpは、名前からイメージできるように、もともと環境問題を取り上げるWEBマガジンでしたが、今は「ほしい未来は作ろう」というコンセプトに沿って、様々なテーマの活動を取り上げています。年間600本の記事が出され、月間読者は15万人を超えています。

greenz.jpでは、たくさんの社会起業の事例が紹介されています。自分で考えても新しいことを思いつくのは難しいことですが、事例からヒントを得たり、周りのリソースを結びつけて活用することで実現できることは、たくさんあります。講演では、下記のような事例の紹介もありました。

  • 上勝百貨店  >greeenzでの記事はこちら
  • New People Stプログラム
  • オフグリッド的生活(荒井由己さん)
  • Kitch Hike(キッチンのヒッチハイク)
  • 片浦オフグリッドプロジェクト
  • ハッピー・アウトドア・ウェディング
  • 摩那山リュックサックマーケット

社会の変化を促せるように、メディア+人と人が繋がるきっかけを提供

しかし、WEBサイトで情報発信しているだけでは、なかなか社会が変わらないと考え、「人と人がつながる」ために「green drinks Tokyo」というイベントを2011年から始めました。これは2007年ロンドン発祥のイベントで、同じような価値観を持っている人がこの場で出会い、新しいことを生み出そうというイベントです。今では各地で開催されるようになり、「green drinks Japan」というネットワークもできています。また、虎ノ門にある「リトルトーキョー」を日本仕事百貨と共同で運営し、「やりたいことをできる場所」としてイベント等を開催しています。それでも、まだまだ未来は変わらないと考え、ライター養成やDIY、起業などのクラスを「green school」として開催しています。

現在、グリーンズは、NPO法人として運営しています。WEBマガジンgreenz.jpは企業の中の新規事業として始まり、そこからスピンアウトして立ち上がりました。取引先が拡大したことで、LLP(有限責任事業組合)から株式会社へと変更し、投資家からの資金も得て、一時は10人以上の社員を抱えていました。広告収入も拡大したのですが、株式会社として「パワー」を追いかけることが求められる中で、鈴木さんはグリーンズや社会への「ラブ」が失われていくように感じ、心身が疲弊してしまいました。そこで思い切って社員も投資もいったん整理し、「greenz.いいよね」と思ってくれる人の力で事業をしていきたいと考え、3人のNPO法人で再出発することにしたのです。

現在は、協賛プロジェクトなどの収入でWEBマガジンを運営していますが、会員制度「green people」に力を入れており、会員しか買えない特別な本を提供したり、会員同士が集まる場を設けるなど、「greenzいいよね」と支えてくださる方達の力で運営していくことを目指しています。

「やりたい!」を引き出すコミュニティ運営の秘訣

NPO法人グリーンズは、正社員にあたる方が4人、アルバイトを入れても10人という少人数です。しかし、ライターなど一緒に運営している方が約200人おり、企業パートナーも数十社にのぼるなど、NPO法人自体も一つのコミュニティとして運営されています。

協力しながら運営する鍵は、自分達のつくりたい未来と、相手のつくりたい未来を分かち合う関係を作ることにあります。例えば、ライターとは半年に一回、一人ひとりと面談の場を設けて、「やりたいこと」を丁寧に話し合っています。ライターの変化する興味、関心に対応した記事を書いてもらうことで、とても愛情に溢れた良い記事ができていくのです。

イベントは社会起業を考える人の万能薬?

鈴木菜央さん3鈴木菜央さんのこのような運営の源泉のひとつとなっているのが、green drinksでの経験です。運営は、話したいテーマについて参加者を集めるだけで、当日は参加者のみなさんに任せます。参加者が話したい事を話したり、参加者同士で共通の興味について話し合っています。そこでは、運営側が自分で全てを作り上げようとせず、「やろうよ」と呼びかけるだけです。green drinksは、「参加者が参加者を面白がる」ことで盛り上がります。その様子は、参加者だけではなく運営している側も楽しんでおり、さらに、法人の顧客候補を巻き込むことにも有効です。イベントに参加し、雰囲気を理解し、自分も良い体験をすることで、グリーンズへの発注も生まれてきます。

また、イベントは、顧客集めだけでなく、スタッフ等のリクルーティングの場にもなっています。イベントに何度も足を運んでくれる方は、活動に対して良いと感じていて、似た様な価値観を持っている方である可能性も高いです。自分達のスタイルを大切にしたイベントを定期的に開催していくことは、顧客を集めたり、人材募集にも有効です。

イベントを開催しようとすると、参加者が集まるか不安に思う人が少なくありません。しかし、3人しか集まらないなら、それもラッキーなのです。なぜなら、様々な実験ができるからです。グリーンズも、小さくシンプルに回すことを沢山やることで、様々なことができるようになってきました。

とにかくギブ・ギブ・ギブ!を遊ぶ

社会的な活動では、こちらがギブしても、テイクが訪れるのは3年後かもしれません。「遊ぶ」領域での大量なギブから、将来テイクが帰ってくるので、とにかくギブ・ギブ・ギブ!を遊んで欲しいと思います。その際に重要なのは、以下のような視点です。

・自分を活かす→本当に自分がやりたいことなのだろうか?を考える
・周囲を活かす→周りの人の欲求は何か?を考える
・環境を活かす→立地・経験などありとあらゆることがリソースとなると考える

greenzの軸にあるソーシャルデザイン。

社会起業とは、「社会的な課題の解決と同時に新たな価値を創出する画期的な仕組みをつくること」と鈴木さんは考えています。さらにグリーンズの経験から、鈴木さんは暮らしのデザインも含めた、新しい発想が必要だとも考えています。それが「ソーシャルデザイン」です。

ソーシャルデザインとは

・暮らしのデザイン
・社会のデザイン
・未来のデザイン
つまり、「活かし合う関係性のデザイン」なのです。

「ソーシャルデザインは社会のことを考えるだけではない」と考えるようになったのは、鈴木さん自身の体験によります。グリーンズを成功させるため、一心不乱に仕事に没頭していた鈴木さん。ある日、子どもから「パパ、また来てね」と言われてしまい、「自分と家族のデザイン」ができていないことに気づいたそうです。これを機に、あらゆるレベルでの、ソーシャルデザインの現状に思考をめぐらせることで、以下のことに気づきました。

  • 小さいレベル(個人・家族)  社会のデザインと暮らしのデザインが分離している
  • 中くらいのレベル(仕事)  社会のデザインが経済的に成立する例が少ない
  • 大きなレベル(未来) それぞれの活動がつながり合い、活かし合う生態系になってきていない

つまり、どのレベルも持続可能になっていないのです。より大きなレベルを追いかけるあまり、小さいレベル(個人や家族)の部分が犠牲になっているのは、「ソーシャルデザインのドーナツ化現象ではないか」と鈴木さんは考えるようになりました。

最も中心にあるのは「心」

鈴木菜央さん2鈴木菜央さんにとって、社会は自分とは別にあるのではなく、「心→からだ→家族→コミュニティ→社会→未来」の順に、全てがつながっています。コミュニティや社会・未来を変えるためにも、心・からだ・家族を大切にして、「やりたいこと」をやって欲しいと鈴木さんは考えています。

そして、「どれだけ社会を変えられるか」つまり「どれだけ幸せにつながるか」を考えたお金の使い方をすること。その中には、自分自身の暮らしのコストを減らし、モノを持たないことで自由になることを実感することも含まれます。

そこから生まれた自由で、自分がやりたかったことをやったりすることで、ほしい未来を手に入れる可能性が広がっていくのではないでしょうか。

◇  第2部 鈴木菜央さんと受講生の対話

前半の講演から、「鈴木さんに訊いてみたいこと」を付箋に書き出してもらったところ、40枚を超える質問や感想が貼り出されました。その中には、鈴木さんの講義内容に加え、自身のライフスタイルに関する質問もありました。その中で、特に多かったのは、コミュニティの作り方や、組織の仕組みについての質問でした。ここからは、それらの一部をご紹介します。

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Q.周りに任せることが大切だが、「自分がやらなくちゃいけない」という時があると思う。そんな時は、リーダーシップにどれくらいのブレーキをかけますか?

A.「巻き込まなきゃいけない」と考えているということは、周りの参加や協力を得るための、何かが足 りないと思います。やりたいと言ってくれることを待ち、人の心の動きを捉えて、それをうまく形にすることが必要だと思います。例えば、「集客に困る」のであれば、参加者にとっての内容が弱いからかもしれません。良ければ回数を重ねるごとに、自然と人が集まるようになるはずです。

Q.ライターさんと、どのように話すのですか?

A.半年に一回、面談を行っています。「今の状況が良いかどうか」「やりたいことは変わってないか」などを話します。そうしたコミュニケーションをとることで、グリーンズから「やってください」とお願いすることなく、ライターさんから「やらせてください」と言われるものが出てきます。そのような企画だからこそ記事のクオリティがとても高く、愛が滲み出てくるような素晴らしい記事が出来上がってきます。

Q.メンバーとはどういうミーティングをしていますか?

A.みんな別々のところに住んでいるので、アジェンダのあるミーティングをGoogleハングアウトでやります。ミーティングに関わらず、「どれだけやることを減らすか」をテーマにしています

Q.green drinksで気をつけていることは何ですか?

A.来た人がコンテンツになるような場づくりを心がけています。来た人同士がつながり、フリーアジェンダで、来た人が話す内容を決める。僕たちは何もせず、この場を使って参加者同士をつなげるだけ。ゲストを呼ぶ必要もないし、何もしないのにみんなに喜んでもらえる素敵な仕組みです。クライアントも最初から「お客さん」という関係ではなく、green drinksでできた飲み友達という関係性を大事にしているので、楽しい場を提供することから始まる関係性づくりということになります。green drinksでは、有機野菜のフードを売ったりもしますが、それもつながるチャンスです。イベントをして、食べ物が必要なら自分の好きなケータリングをしている人に発注するチャンスです。このように、あらゆるチャンスを逃さないように心がけています。

Q.菜央さんがワクワクすることは何ですか?

A.「暮らしのコストを下げて質を上げる」ことがワクワクすることです。普段の暮らしからドキドキワクワクするような状況を作れば、旅行などの支出をする必要はないかもしれません。
例えば、今暮らしているタイニーハウスだと、コストも下がるし物欲も下がる。それに話しのネタになる!みんなにとって面白いことなので、みんなに笑ってもらえる、自分にとって理にかなった選択です。
グリーンズはサステナブルとか平和とか言っていません。でも心に手を当てて幸せについて考えてみれば、そういうことに自然となってくると思います。自分の心が動くことをやっていくと、自然と社会性を帯びてきて、必然的に社会と接続するようになるし、社会問題と接続するようになります。

Q.お金儲けはしてはいけないと思いますか?

A.クライアントさんが沢山お金をくれるのは大歓迎ですが、真面目に何かを生み出すようなことをしていれば、儲けすぎるようなことは難しいだろうと思います。

受講生からたくさんの質問が
受講生からたくさんの質問が

 

鈴木さんより、まとめのメッセージ
「ほしい未来のためにお金が流れる仕組みをつくろう」

子供たちが社会に出て行く頃に幸せな社会があるかわからないし、自分が幸せになるためには社会が幸せになる必要があると思います。そして、自分が幸せでないと社会を幸せにできないと思います。

どれだけ自分の信じていない社会につながる支出を減らし、ほしい未来のための支出を増やし、自分の能力を伸ばしていくか。社会的企業が、そういった人を採用すれば、ほしい未来のためにお金が流れる仕組みができるのではないかと考えます。
今は企業にリソースが集まっているので、みんなが平場に集まって話し合い、良いと思う会社のリソースを活かし合えるような場を作っていきたいと思います。
「ソーシャルデザイン」と聞くと、大きなことを考えなければならないと考えてしまいがちですが、鈴木さんは、自分の心の位置を確認しながら、自分自身が楽しくやることを大切にしていることが印象的でした。また、グリーンズは、正社員が少なく多様な人が主体的にして運営していること、イベントを人とつながる効果的な機会としています。このことは、地域活動に取り組む人にとって大切なヒントになります。

お互いの考えを分かち合いながら、周りと自分を活かしていくことが、ほしい未来へつながっていくと感じました。

 


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