【開催レポート】(9/28)文京ミ・ラ・イ対話 第1セッション「まちで健やかに子どもが育つ文京区」


9月28日、文京ミ・ラ・イ対話の第1セッションとして「まちで健やかに子どもが育つ文京区」を開催しました。
2014年度の文京ミ・ラ・イ対話は、年間を通して「地域課題を知る」「解決策を深める」という2つのセッションで議論を深めていきます。今回は「まちで健やかに子どもが育つ文京区」をテーマに、第1セッション「地域課題を知る」ことを目的に対話を進めてきました。

当日は、区内外から29名が参加し、ゲストが取り組む先進事例や、区の現状と取組みについてお話を聞いた後、テーブル毎にそれぞれの参加者の視点で捉えた地域課題について話し合い、課題を共有しました。

当日のプログラムは以下のとおりです。

1.イントロダクション
・対話の主旨について
2.ゲスト・トーク
・認定NPO法人カタリバ 今村 亮 氏「b-lab[ビーラボ](文京区青少年プラザ)への思い」
・NPO法人ダイバーシティ工房 不破 牧子 氏「日本一家庭的な塾」
3.文京区の現状と取り組み紹介
・すべての子ども達が輝く未来を持てる社会へ(福祉部)
・中高生の育成について(男女協働子育て支援部)
4.対話「まちで健やかに子どもが育つ文京区をつくるには?」
【テーマ1】「生活環境や家族の状況に関わらず、子どもたちが輝く未来を持てる地域にするには?」
【テーマ2】「中高生の地域での居場所をつくるには?」
【テーマ3】「文京区の教育力を高めるには?」
5.まとめ

1.イントロダクション

開会に当たり、まず文京区の境野協働推進担当課長が挨拶を行った後、事務局の広石(㈱エンパブリック)が、文京ミ・ラ・イ対話の主旨と第1セッションの位置づけについて説明を行いました。第1セッションは、「地域課題を知る」をテーマに、重点テーマに関連する社会課題に実践的に取り組むゲストのお話や、区職員から文京区の現状と取り組みについて紹介を行った上で、文京区のより良い未来をつくるために取り組むべき課題は何かを、共に考えました。
今回の対話の場には、地域で活動をしている人や教育関連の事業を将来立ち上げたいと考えている人、中高生の子どもを持つ母親、子どもの支援に関心のある人など多様な人たちが参加しました。また、参加者の年齢層も10代〜80代と幅広く、世代を超えた対話の場が生まれました。

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 2.ゲスト・トーク

中高生との「ナナメの関係」づくりに取り組む

最初のゲストは、認定NPO法人カタリバの今村亮さん。今村さんも昨年度子どもを授かり、教育について改めて考えられたようです。カタリバの問題意識は「教育を学校に丸投げしてよいのか?」という点。この問題に対して「教育というテーマは皆で取り組んだ方が絶対よい!」と考えたことから活動が始まりました。メインの対象は高校生。現代の高校生の意識調査によると、3人に2人が「自分はダメだ」と考えているようです。この問題に対応するため、カタリバは大学生などの身近な人生の先輩が学校に出向いて、自身の経験を高校生と本音で語り合う「カタリ場」授業が始まりました。
現在、文京区では4つの中学・高校と関わっており、そこには、カタリ場に興味のない生徒との出会いもあり、毎日が真剣勝負。「学校に出向くアプローチ」と「学校を飛び出した生徒へのアプローチ」の両方を実践しながら、生徒との「ナナメの関係」をつくる取り組みを行っています。

会場には、今村さんの誘いに応じた区内在住の現役の高校生も参加しました。
彼女は、学校に行っていない時期があったため、友達と関われずに過ごした期間がありました。その後、英語への興味から英会話カフェに通い、学校の外の人と関わる機会ができたそうです。そして、高校に進学してからはニューヨークに1ヶ月滞在し、刺激を受けたことをきっかけに、東北の復興支援に取り組む団体や、学外の人と関わるきっかけづくりに取り組んでいます。最近の出来事として、ある地域のイベントへの参加を通じて、地方の高校生は地元の良いところと悪いところを自分の言葉で話せているのに対して、自分は地元のことを知らないことに気づいたことから、現在は地元のことを調べながら、自分の活動のプランを考えているそうです。

今村さんが調べたところ、文京区に住んでいる中高生は8000人、通学している生徒は23000人いるそうです。現在、カタリバは文京区と連携しながら、2015年にオープンを迎える文京区青少年プラザ「b-lab[ビーラボ]」の準備を進めています。b-labのコンセプトは「いつでも、なんでも挑戦できる中高生の秘密基地」です。これまでの施設のように、大人がつくって、中高生が利用するのではなく、中高生が主役となって場をつくる取り組みを始めようとしています。今村さんは最後に「中高生と一緒に創るプロセスそのものが、文京区にとっての価値になるようにしていきたい」と語りました。

 b-lab 公式サイト

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子どもたちにとっての「小さな成功体験」が得られる機会をつくる

続いて、NPO法人ダイバーシティ工房の不破牧子さんにお話しいただきました。不破さんは自身が取り組む「自在塾」を通じて生活困窮世帯への学習支援事業等に取り組んでいます。

不破さんが統計数値から導き出したところによると、文京区の不登校児童の数及び生活保護家庭の子どもの数は、どちらも100人程度いると考えられるそうです。NPO法人ダイバーシティ工房が目指すのは「全ての子ども達が多様な価値観に出会い、自立して生きていける社会」です。「自在塾」は、「学ぶことで自由自在になれる、そのきっかけになれる場所」として、不破さんのお父様が27歳の時に立ち上げた塾です。

自在塾の生徒はとても勉強が苦手な子どもばかり。その背景には、両親の離婚や精神的な病をもった親、経済的な貧困など、子どもにとって「とても勉強する意欲が湧く状態ではない」環境があります。不破さんは自在塾の生徒を調べていく過程で、勉強が苦手な子どもの背景には、一つの問題だけでなく複数の問題が重複しているケースが多いことを見つけました。その一方で、成績の高い子どもは家計に占める学校外教育費の割合が高く、親の年収が高い程、大学に進学する割合が高いこともわかったそうです。

不破さんは本質的な課題を自在塾の生徒と接しながら考えてきました。その結果、勉強に関して意欲が少ない親は子どもの勉強に対しても意欲が低いこと、それによって、子どもが認められたりほめられたりする経験が少ないこと、子ども自身も勉強に対してやる気がなくなることに気づきました。そして、そのような環境から貧困が再生産されるのを防ぐための取り組みを自在塾の中で行っています。

現在の子どもの貧困率は16%、6人に1人が貧困と言われています。自在塾の活動は「勉強への意欲」と「自己肯定感を高める」ことを通じて子どもが低学力になるのを防ぐこと。自在塾ではバーベキューやクリスマスパーティ、ひな祭り等の勉強以外の行事を沢山行っています。これらの行事は単に楽しむ為のものではなく、子どもたちの自己肯定感を高める為の取り組みとして行われています。イベントの予算決め・買い出し・調理など全ての行程を子どもたち自身が行い、大人は手を出さないようにしています。そうすることで、子ども同士が互いに助け合って準備を進めるようになるそうです。そして、最後に全員で振り返りを行い、人にしてあげられたこと、人にしてもらったことは何かを一緒に考えます。このようなプロセスを経ることで、子ども達が小さな成功体験や、自己肯定感を得られる機会となり、子ども達にとって自在塾が「自分の居場所」だと感じられるようになっていくのだそうです。

不破さんは最後に「自在塾が大切にしているのは勉強以外の関わりで、個別指導、学習指導以外の学べる環境づくりを重視していきたい。」と語られました。

 ダイバーシティ工房WEBサイト

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現場にいるからこそわかる、今の中高生について見落とされがちな視点は?

ゲスト・トークの後、今村さんと不破さんから「現場にいるからこそわかる、今の中高生について見落とされがちな視点」について、以下のコメントをいただきました。

「例えば、自分の子どもの友達など、困っている子どもは身近なところにいます。でも、親は自分の子どもの友達の中に、生活保護の子どもがいるとは思っていない。実際にそういう子どもと話せるきっかけ、出会えるきっかけがないと思います。今、自在塾に通っている子どもは母子家庭の紹介で来ていますが、実際はもっと多くの人が困っていると思います。」(不破さん)

「ゆとり教育をはじめとする教育の動きは、教育における学校の役割を縮減していこうとする動きだと思います。その結果、起きているのは学校の外につながりを持っている子どもと、そうではない子どもとの違いが如実に現れてくるようになったと感じています。一例として、学校の外のつながりがインターネットだと捉える動きがありますが、これについては、それほど悪いことだとは思っていません。インターネットがない子どもとのつながり力の格差はあると思いますが、教室の外ではWEB上でのつながりがつくりやすいし、新しい「つながり力」のようなものがあると思います。」(今村さん)

 

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3.文京区の現状と取り組み紹介

ゲスト・トークの後は、区職員から文京区の現状と取り組みについての紹介を行いました。

「すべての子ども達が輝く未来を持てる社会へ」福祉部生活福祉課:千葉さん

千葉さんからは、生活困窮世帯への学習支援事業についての取り組み紹介がありました。学ぶ意欲が高いにも関わらず、家庭の経済的環境の厳しさや、学校の授業についていくことが難しい子どもたちを対象に、基礎的学力を定着させるための学習支援を行っています。来年度からは、学習支援回数を増やすとともに、新中学3年生を対象に、公立高校の入学を目指すための民間の進学塾への通塾支援も行うことで、生活困窮世帯への支援の充実を図っていきたいと話されました。

「中高生の育成について」男女協働子育て支援部児童青少年課:杉山さん

杉山さんからは、青少年対策地区委員会(地区対)とb-lab[ビーラボ](文京区青少年プラザ)の取り組みについて紹介がありました。区では平成23年度に中高生育成基本方針を策定し、中高生に必要な3つのチカラについて、以下のように定義しています。

(1)目標に向かって、自ら考え歩みだせる「チカラ」
(2)失敗や挫折を乗り越えて、自分らしく生きる「チカラ」
(3)自らの体験・経験を他人のために活かせる「チカラ」

そして、これらの3つの力を子どもたちが身につけていくためのステージとして

(1)自分に気づき、自分を築く「きっかけ作りの場」
(2)手伝うから創り上げるへ「自分を高める場」
(3)若い力を他者へ還元し「自らが必要とされる場」

が必要だとしています。これらの場をつくるための取り組みとして、地区対では、今年度より「参加から参画へ」を掲げ、その活動において、カヌー体験などの小学生向けの事業と中高生のボランティアを組み合わせた事業を実施しています。また、中高生に対する魅力的なアプローチに向けて、2015年4月にオープン予定のb-labは、「いつでも、なんでも挑戦できる中高生の秘密基地」をコンセプトに、中高生にとって関心が高い事業を実施していきたいと話されました。

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4.対話「まちで健やかに子どもが育つ文京区をつくるには?」

文京ミ・ラ・イ対話の後半は、ゲストと区職員を交えたワールドカフェ形式での対話の場。今回は3つのテーブルテーマについて、グループセッションを3回行い、対話を進めていきました。

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【テーマ1】「生活環境や家族の状況に関わらず、子どもたちが輝く未来を持てる地域にするには?」

「グループセッションで出された意見」

  • 子どもが多様な価値観を持っている現代において、大人がそれについていけなくなっていると感じます。大人こそ多様な価値観を認め合う必要があると思います。
  • 挫折を味わっている子どももいます。子どもが輝けないようにしている邪魔者はなんだろう。
  • 子どもの輝く未来を大人の視点で勝手に決めつけてしまうのはよくないのではないでしょうか。
  • 中高生は難しい年頃なので、思春期の子どもたちの悩みに対してどのように対処してよいのかわからない。
  • 強制的に子どもにやってもらうことも時には必要だと思う。勉強等は特にそうかもしれない。
  • 中国は凄く勉強しています。周りが勉強していてヤバいと思う感覚も大切だと思います。
  • 子育て支援の活動をしていますが、経験の中で子どもに対するケアの難しさを感じています。
  • 横のつながりができればと想い、学習塾を立ち上げました。
  • 子どもにとってのサードプレイスを、親が必要だと感じることも必要だと思います。
  • 女性の働き方が子どもに影響するのではないでしょうか。母親が心地よく働ける環境を整えることが大切だと思います。

【テーマ2】「中高生の育成(事業や居場所等)を地域で推進するには?」

「グループセッションで出された意見」

  • 私立の学校に通っていると地域に居場所がなくなる。地域の人と出会える機会やきっかけが必要だと思います。
  • b-labは既に輝いている子どもが行くイメージがある。超オタクな人でもふらっと訪れられる場所が必要では。
  • 目的がなくても行ける場所が必要だと思う。漫画が読める、ゲームができると行った身近なコンテンツが必要。
  • 文京区にいる地域の高齢者など、大人とふれあえる場所があると良い。単純だけどご飯を一緒に食べる場所があっても良いと思います。
  • 文京区にはユニークな企業や工場がある。そういった場所を開放して訪ねられると良いのではないでしょうか。
  • マンションの住民同士が茶話会で話をすると、ひきこもりの子どもを持った親がいることがわかりました。そういった親同士のつながりから、マンションの中でも子どもの居場所をつくることができると思います。

【テーマ3】「文京区の教育力を高めるには?」

「グループセッションで出された意見」

  • 教育力とはそもそも何か。受験だけではなく「生きていく力」「社会に役立つ力」など色々あると思う。
  • 子ども同士で遊ぶことが難しい。家や学校の外でつながるには町会だけではなく、地域をあげて取り組む必要があるのでは。
  • 文京区には、子どもが有名校に通っている「特別な地域」というブランド意識があると思います。
  • 文京区には片親でも経済力のある家庭がある。しかし、経済力があっても親が学校や塾に任せっきりなのか、大人との関係がつくれない子どももいる。
  • 学校の先生も地域に出ていくことが大切なのではないでしょうか。
  • 学力の高い子どもは「いい子」だといわれるが、受験へのプレッシャーから不登校になることもあります。
  • 幼稚園児や小学生にいいお兄さんやお姉さんの活動を見せたい。

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5.まとめ

対話のグループセッションを経て、参加者からは今回のテーマについて沢山の意見が出されました。対話を経て、参加者から以下のような感想も寄せられており、文京区であるがゆえの子どもの教育の難しさもあるようです。

  • 教育の文京区とはいわれているが、親や子どもがバラバラになっているところもあるので、それらを地域でまとめていくことが難しい地域でもあると思いました。逆の意味でとらえると、挑戦のしがいがある地域だと思います。
  • 個人で教育活動をしていくなかで、気づかない問題が沢山あると思いました。親世代がキーポイントになると感じました。

また、ゲストの不破さんと今村さんからは、対話後の感想として以下のコメントをいただきました。

  • 「文京区に来る機会は少ないのですが、区を中心に今回のような場ができるのは良いと思いました。行政がこのようなテーマにも関心をもっていることが凄いと思いました。文京区に住んでいる子どもたちには、これから色々な出会いが生まれるでしょうから、うらやましいなと思います。」(不破さん)
  • 「対話を通して文京区なりの難しさを皆様に教えていただいたと思います。b-labをやるからには、僕の人生をかけてよいものにしていきたい。だから、今日のような場を自分でも創りながら、皆様の考えをもっと学び、これから頑張っていきたいと思います。」(今村さん)

 

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次回の文京ミ・ラ・イ対話は10/1(水)に開催します。「暮らしやすい文京区を実現する地域力」をテーマに礒井純充氏(森記念財団)をゲストに迎えて対話を行います。文京ミ・ラ・イ対話を通して、地域課題と解決策がどのように結びついていくのか、今からとても楽しみです。


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